日差しが突き刺さる。 青い空、白い雲、なんて爽やかに言ってみても、年頃の女の子が気にするのはそんなものよりも紫外線対策。 毎日外に出るときには日焼け止めを塗っているけど、汗で流れて結局のところ日焼けしてしまう。 これさえ無ければ夏は好きなのに。なんて、言ったところでどうしようもないけど。 グラウンドでは我が桐青高校の球児たちが駆け回ってる。 よくもまあ、そんな体力があるもんだって、毎日のことだけど、毎回感心する。でも、それをフォローするために、私たちマネージャーもいろいろと駆け回ります。ああ、忙しい。疲れる。 「おい、」 「え、なに」 拾い集めたボールを籠に入れ、運んでいるとき。 野球部エースの高瀬準太がこちらに駆け寄ってきた。あれ、今は打撃練習中じゃなかったっけ。もしかして怪我でもしたんじゃないかって、腕や膝なんかに視線を向けるけど、そんな様子は見当たらない。 首をかしげていると、近くに来た高瀬が私の頭に帽子を被せた。すっぽりと音がして、頭に深く嵌る。降り注ぐ紫外線が遮られて、ちょっとだけ涼しくなったような気がする。 いつもなら被ってた、桐青マークのついた野球部の黒い帽子。そういえば被ってなかったっけって、今更だけど気付いた。 「帽子は必須だろ。なんで被ってないんだよ」 「あー…、忘れてた」 「忘れてたって…。まったく、熱中症にでもなって倒れたらどうすんだよ」 はぁ、と高瀬はため息をついた。 私は自分で自分に苦笑して、はは、と小さく笑い声を上げる。 「私は選手じゃないし。高瀬には影響ないから大丈夫だよ」 「…そうじゃなくって! たまには自分のことも心配しろよ」 高瀬は、私に被せた帽子の鍔を、くいっと下に引いて、無理に下を向かせた。それにつられて下を向いて、高瀬の顔が見えなくなる。うわっと色気もなにもない声を上げていたら、上の方から高瀬の声が聴こえた。 「行くんだろ、甲子園」 自信満々な、低い声だった。 帽子の所為で高瀬の顔を見ることはできなかったけど、たぶん、ちょっと赤いんだろうなあと、思った。敢えて顔を隠すってことは、高瀬なりの照れ隠しだって、中学からの付き合いでとっくに気付いてる。 その顔が見られないことは残念だけど、逆に私の顔も見られることがなくて良かった。だって、わたしも多分、顔が火照ってたと思うから。(暑さの所為じゃなく、別の理由で、) 高瀬はあたりまえのことを言っただけなのに、どうしてこんなに顔が熱いんだろう。心臓がどくどく速さを増すんだろう。どうして、どうして。 私が、うん、と小さく頷いたあと、高瀬が練習に戻っていくのが足音で分かった。 白いユニフォームに10の文字。いつのまにあんなに大きな背中になったんだろうって、ふと思った。 高瀬の言葉が、未だに耳に残ってる。 (俺が連れて行ってやるんだから) (それまでに倒れたら元も子もねーだろ) 2010.08.31 三笠 |