今日(書いた日)はいい夫婦の日!

結婚してそろそろ半年。今朝も準太…、あ、ええと、旦那さまを玄関までお 見送り。鞄を持って、準太が靴を履くのを待っていた。

「あ、そういえば、今日遅くなるかも」

ぽつり、と準太が呟いた。え、と私の口から意味を持たない声がこぼれて沈 黙。同棲期間も含めて、準太からそんな台詞を聞くことは極めて少なかった 。忘年会とか新年会とか、送別会とか。そういう特別なときだけだったから 、今日はどうしたのだろうといろいろ考えてしまう。

「そんな顔すんなよ」

準太が、笑った。靴を履いて立ち上がって振り返って。そして彼は私を見る 。私は、彼を見上げる。彼の手が、私の頭に触れた。

「だ、だって…」
「ちょっと明日のプレゼンの準備に時間かかりそうなだけだから。終わった ら、なるべく早く帰るよ」

大きくて節くれだった手が、私の髪を撫でる。野球をしていた頃の名残なの か、それとも男性の手はこういうものなのか。マメが潰れて固まった手は、 固くて大きくてガサガサしている。私はこの手がすごく好きだ。
ふ、と準太の手が私の肩に宛てられて、抱き寄せられた。え、と言うのと同 時くらいに視線は準太のスーツに覆われた。あ、あれ…?そしてすぐに、耳 元に準太の吐息。

「だから、お前はちゃんとイイコで待ってろよ」

分かったか、と準太は言う。こくりと頷くと、満足そうに準太は笑った。



言われなくても。
(貴方を待つのも私の務め)



2010.11.22 三笠