喉を、汗が伝った。(ああ、融けてる)

『本日○○市で、今年の最高気温を更新しました』

昼間のニュースを思い出した。毎日が最高気温なんじゃないのって思うくらい、このところ、ずっと暑い日が続いている。もはや最高気温なんて言葉、私の中では意味を失っている。暑いときは暑い。寒いときは寒い。最高だとか最低だとかそんな言葉をつけるとさらに暑苦しく感じてしまう。この気持ちが悪いくらいの暑さに理由が出来てしまう。ただただ、蒸し暑いと言えばいいのに。
ぬるま湯に浸っている様に、気だるい感じが付きまとう。暑い夏真っ盛り、コンビニから出た私たちの身体に、クーラーとは正反対の熱が身体を包み込んだ。

「あちィー」
「ほんとにねー」

だらだらと帰り道をゆっくりと歩く。二人で持った一つのコンビニ袋は、歩くたびにかさかさと音を立てる。私と高瀬の間を繋ぐただの安っぽいコンビニ袋は、たぶん一人で持つよりもずっとガサガサと音を立てていた。中にはペットボトルがふたつ、それにコンドーム。きっとコンドームはペットボトルから湧き出た水分で濡れてしまっているだろうなあとぼやけた頭で思った。

「準太さ、」
「なんだよ」
「ん…なんでもないや」
「そうかよ」

そっけなくそんな会話をして、後はただただ無言で私の家に向かった。私の、なんて言っても、準太は毎日のように入り浸っていて、半ば同棲しているようなものだけど。

きっとこのあとも家に帰ってシャワーを浴びて、ごろごろしてたらいつもみたくなんかそういう雰囲気になってえっちなことをするんだろうなあと考えたら、なんだか億劫なような気もしたけど、それと同時になんだかすごく幸せなような気がした。
この蒸し暑い空気に融かされて、準太と一緒にどろどろに蕩けて混じってしまえばいい。そうなればきっと幸福でなにもかも満たされた気持ちになるんだろうに。





(ねえ、準太)
(なんだよ。また呼んだだけか?)
(ううん。今日はたくさんぎゅってしてほしいなって)
(…可愛くおねだり出来たらしてやるよ)
(ヘンタイ)


2010.09.30 三笠