グリンゴッツを出ると、すぐに別行動になった。 「一時間後にフローリシュ・アンド・ブロッツ書店で落ち合いましょう。教科書を買わなくちゃ」というモリーさんの一言で、それぞれがバラバラに動き出す。 私はジョージに誘われたけど、ジニーに古い道具を譲る約束があったから、丁重にお断りした。そして、家へと戻った。 「教科書は大体揃っていると思います。卒業した親戚の教科書や鍋なども貰ったので、欲しいものがあればどれでも持って行ってくださいね」 屋敷しもべ妖精のナーレがばたばたとリビングにホグワーツで使う道具を運んだ。私が来年以降使う可能性のある教科書類は自室に置いてある。 親戚じゃなくても、近所のホグワーツ卒業生たちから引き取ったものもあり、結構な量だ。 ジニーの教科書は一揃えでき、鍋や秤も状態がいいものを選んでいった。 「制服は、貰い物がいくつかあるので、サイズがあればそれをどうぞ。私が着られなくなったものもあるし…、あ、男性用の制服もありますけど、見ます?」 「ええ、お願い。みんなどんどん身長が伸びちゃって。いくら買ってもすぐに短くなっちゃうの」 「そうですよね。ジョージたちもちょっと見ないうちになんだか身長が伸びているような気がして。あ、ジニー、これなんかどう? ちょっと大きいかな」 ナーレが魔法を使ってクローゼットごと持ってきた。 そこからいくつかジニーの身長に合いそうなものを選んで渡す。 ジニーはそれを自身に宛ててサイズを確かめている。 「ちょっと着てみてもいい?」 「いいよ。向こうの扉の先がキッチンなんだけど、誰もいないほうがいいならそっち使って?」 「ありがとう、そっちで着替える」 隣の部屋へぱたぱたとジニーが移動している間に、モリーさんはクローゼットから男物の制服を取り出していた。 「あの子たちを連れてきたら良かったかしら。まだ成長期だし、大きめのものを持たせたほうがいいわよね」 「そうですけど、あんまり大きくても笑われてしまうし、どのくらい伸びるかわかりませんしね」 「ううん、難しいわ…。女の子ならある程度予測がつくのに、あの子達ったら、」 「帰るときもうちの暖炉を使いますよね。それなら、そのときに合わせてみたらいかがですか? クローゼットはこのままにしておきますし、もし他の兄弟も欲しいものがあれば、持っていけばいいですし」 「あら…、でも、迷惑じゃない? おうちの人はなんて言っているの?」 「あ…えっと、今は私1人なので。全然迷惑なんかじゃないです」 「そうなの? じゃあ、お言葉に甘えましょうかしら」 はい、ぜひ。そう答えてから、ナーレにそのままにしておくように伝える。 ナーレは持ち運んできた本を綺麗に並べ替えているところだった。 快く了解して、それからジニーが持っていく荷物を纏め上げてくれた。 丁度そのとき、扉が開いて、ジニーが制服姿でこちらに来た。 「ジニー、よく似合ってるわ。サイズはどう?」 「ちょっと袖が余るわ。スカートは大丈夫」 「1年もすれば余らなくなるわ。ローブもあるけど、これはどう?」 ローブに腕を通すが、やはりちょっと袖が余る。 このくらいだったら詰められるけど、冬場は厚着をするし、詰めないほうがいいかなあなんて考える。 「これより小さいサイズっていうと、私が一年生の頃のになっちゃうしなあ」 「の?」 「うん、でも今のジニーより小さかったから、着られないと思うな。ちょっと合わせてみる? ええと、…これかな」 手前にあったローブをジニーに合わせてみるが、やはり小さい。 袖が余るどころか足りない。 そうだよなあとは思いつつも、少し苦笑した。 「うちにあるのはこれで全部だから、選ぶならそれがいいと思うな」 「うん、これがいい。ありがとう、」 「本当に助かるわ。買うのはロックハートの本だけになったし」 「お役に立てたのならなによりです」 女性用の制服をクローゼットにしまい始めた。 古い鍋や秤をナーレが倉庫へと戻していき、モリーさんは未だに男性用の制服を見ていた。ついでにダンスローブも。 「ねえ、。なにかお返しをするわ。ジョージのこと好きなんでしょ? 聴きたいことがあれば全部教えるわよ」 ローブやネクタイを脱ぎながら、ジニーは悪戯っこのような笑みを浮かべてそう言った。 瞬間、ぼっと頬が赤くなったのは隠し通せない。 視線を逸らしながら、なんて返事をすれば、いやそもそも認めていいのか、どうしようか、と考える。だって、明らかにジョージはなにも言ってないわけだし、ここで私が「付き合ってます」なんて言えない。好きなことだけは認めてもいい、と思う、けど。 「…いつから気付いてたの?」 「夏休みにジョージに女の子が尋ねてくるなんて初めてのことよ。しかもフレッドとジョージの二人一緒じゃなくてジョージだけ! ねえ、付き合ってるの? もうキスはした? あの人が女の子に興味があるなんて思ってなかったわ! 2人きりのときはどんな感じなの? ねえねえ、教えて」 「こら、ジニー? だめよ、そんなこと聴いちゃ」 「あらママ、ママだって気になってたくせに!が娘になってくれたら嬉しいって言ってたじゃない!」 「それはそうだけど、に迷惑だわ。ねえ、」 曖昧に頷いて、それから鍋を戻してくるからと部屋を出た。 ジニーは結構喋りたがりでおませさんだと聴いていたけれど、こんなふうに聴かれるとは思っていなかった。 ジョージのことはもっと知りたいなあと思うけど、でもそれは本人から直接聞きたいなあ、なんて。 2012.8.11 三笠 |