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新学期は、ポッターとロンが空飛ぶ車でホグワーツへやってくる、なんて大騒動で幕を上げた。
当然のことながら大騒ぎになりながらも、無事に着いてよかったと思う。
呆れるような出来事なのに、グリフィンドールのみんなはまるでヒーロー扱い、ジョージとフレッドも「呼び戻してくれればよかったのに!」と言う始末だ。

そんなこんなで4年生が始まり、去年と変わらぬ授業を受けていた。
…唯一つ、先生の変わった「闇の魔術に対する防衛術」を除けば、の話だが。


「……私、ホグワーツに入ってこんなに解けなかったテストは初めてだわ」
「ロックハートのファン以外無理よ、あんなの」


授業が始まってすぐにテストが配られた。
内容は、「ギルデロイ・ロックハートの好きな色はなに?」なんてくだらないものが3ページ裏表に渡って続いていた。
一通り本は読んだはずなのに、そんな個人的な内容は覚えていなかった。
『週刊魔女』のチャーミングスマイル賞を何度も取っているというのは伊達ではない素敵なスマイルを何度も見せながら、闇の魔術に対する防衛術は、過去にないような、その、なにを学べるのか全く見当もつかないような状態で第一回を終えた。


「ロックハート先生って、話せば面白い人だとは思うけど、授業となると、ちょっとその、……なんて言ったらいいのかわからないわね……」
「はっきり言ったらいいのよ。自分の自慢以外してないって」
「まだ1回目だし、初回だけかもしれないわ」
「断言するけど、あの人が今年1年間先生らしいことをするとは思えないわ」


アリスにしては珍しく怒ったように言い放った。
次の授業は魔法薬学だ。スネイプ先生は今日もまたグリフィンドールに辛く当たってくるだろうなと考えると気分が落ち込む。


「闇の魔術に対する防衛術は、毎年ひどくなってる気がするわ」
「誰もやりたがらないものね。去年は例のあの人の手先だったわけだし」
「結構重要な科目だと思うのに。呪いだって噂は本当かもね」
「呪い?」
「以前、例のあの人が闇の魔術に対する防衛術の先生になりたくて、ダンブルドア先生に直訴したんだけど、断られたんだって。それからは毎年なにか問題が起きて先生が変わるって」
「ええ…? そんなことってある?」


でもあの人なら出来そうね、と呟くのが聞こえた。
そうよね、と返しておきながら、これは結構困った呪いだなあと頭の隅で考えていた。



(でも、例のあの人にも人間らしいところがあるんだなあ、なんて思ったり思わなかったり)


2012.8.11 三笠