06

忙しい1週間が過ぎ、土曜日の早朝。
うっかり談話室で眠ってしまっていた私は、大きな手で揺さぶられ目を開けた。
隣にはアンジーも寝ていて、彼女も眠たげな目を擦っていた。
少しだけ覚醒した頭で辺りを見ると、クィディッチチームのキャプテンであるオリバー・ウッドがそこにいた。


「おはよう、2人とも」
「随分早いわね、ウッド…」
「これからクィディッチの練習だ! アンジェリーナ、ケイティとアリシアを起こしてきてくれないか。女子寮には入れないのを忘れていたんだ」


ウッドの後ろを、同じくクィディッチチームのメンバーがばらばらと男子寮から降りてくるのが見えた。
何度か瞬きをして、それからひとつあくびをしてから立ち上がった。


「アンジー、服を着替えなくちゃ。アリシアとケイティは私が起こしてくるよ」
「ええ…? あぁ、うん…」
「…もう、目を開けて、アンジー。あなたの大好きなクィディッチの練習でしょ?」


何度か揺さぶって起こそうとして、ようやく自分の足で女子寮へと向かった。
ケイティとアリシアも起こさないとなあと思って私も女子寮へと歩きだした。


「あれ…?」


いつもより低い掠れた声で名前を呼ばれてびっくりした。
途端に、寝巻き姿の自分を思い出して一気に目が覚める。
寝起きでぼさぼさの頭をそのままに、ジョージはこちらを見ていた。


「おはよ」
「おはよ…なに、ずっとここで寝てたの?」
「うん、話してたら眠くなっちゃって」


寝起きだからなのか、ジョージはむすっとした顔をしていた。
私よりずっと高いところにある頭に手を伸ばして、撫でるように髪をほぐしていく。


「髪ぐちゃぐちゃだよ」
「ああ、うん、別にいいよ」
「そのままでも充分かっこいいけど、一応ね」


されるがままのジョージの頭を手櫛で整えて、いつもの状態に戻せたら、よし、と呟いて手を引っ込ませる。
ああそういえばケイティたちを起こさないといけないんだっけ。


「じゃあ私寮に戻るね。朝食の時間になっても戻らなかったら、なにか持ってくからね」
「うん…ありがと」


いつもよりぼんやりした声とトーンで話すジョージを見送って、女子寮に戻る。
ケイティとアリシアもやはりぼんやりした顔で、のろのろと仕度をしてのろのろと寮を出て行った。

私は、ちょっと申し訳ないなあと思いつつも、今度は寮のベッドで一眠りした。



2012.8.11 三笠