自分の分の朝食を食べた後、トーストをナイフで切って、サンドイッチを作った。 それぞれハムやレタス、卵を挟んで、簡単な味付けもする。 それらを軽く包んで、バスケットに入れた辺りで、朝食の時間が終わった。 私はアリスと一緒に、クィディッチの競技場へと向かった。 「ロン!ロン!大丈夫?」 悲鳴が聞こえて、私とアリスは顔を見合わせて急いで競技場へ入った。 そこにはグリフィンドールだけでなくスリザリンもいて、スリザリンはみな笑い転げていた。 中心ではロンが蹲って、なにやら嘔吐しているらしい様子が見えた。 「…ナメクジ?」 「そうみたいね」 喧嘩中に呪いをかけてしまったのだろう。 ロンの口からはナメクジが何匹も吐き出されている。 幸い強い呪いではないようだから、そう長くは続かないだろうけど、これは困るだろう。 アリスにバスケットを預け、杖を出して私はロンの背中を擦りながら様子を見た。これなら、もしかしたら終わらせ呪文でどうにかなるかもしれない。 「フィニート・インカンター…」 「エクスペリアームス!」 呪文の途中で、武装解除の呪文によって杖が吹き飛ぶ。 それを受け止めたのは、スリザリンの――ドラコ・マルフォイだった。 「…マルフォイ、杖を返して」 「ふん、僕だってこんなもの要らないさ。ただ、折角の面白いショーが終わるのは面白くないだろ?」 「ショーですって? 全然面白くない冗談だわ」 少し時間がかかりそうだと思って、ハリーとハーマイオニーに、医務室へ行くように指示してそれを見送る。 「―――アクシオ!」 杖を持たずに呼び寄せ呪文をしても、来るか来ないか五分だった。 でも、私の杖は呼びかけに応じて、こちらに来ようともがいているのが分かった。マルフォイが握っていなければ、こちらへすぐに飛んできただろう。 「杖を放せ」 「何で僕が命令されなきゃいけない? ウィーズリー」 「理由なんか必要か? 人のものを盗っちゃいけませんってママに教わらなかったのか、マルフォイ」 「フン、じゃあ人じゃなければいいんだな? 穢れた血なんかよりもよっぽどおぞましいのを知らないのか?」 先日、ルシウス・マルフォイに言われた言葉を思い出した。 “人もどき”そう言っていた。ジョージとフレッドも怪訝そうな顔をしている。マルフォイは何を言っているのか。 「家は魔法省の指示で魔法生物の血を取り入れたことがあるんだろ? だから魔法生物を操ることができる。分かったか、あの女は人じゃない。狼人間みたいなもんさ。汚らわしく――不愉快で――異常な――化物」 「マルフォイ!」 ジョージがマルフォイに殴りかかって、それがクィディッチチーム全体に広がって取っ組み合いの大騒ぎになった。 途中、通りがかったフーチ先生が止めるまで、数分のことだったが、スリザリンとグリフィンドールの大喧嘩は続いた。 私は、あまりに驚いて何一つ言葉を紡ぐこともできないまま、医務室へ向かう流れからこっそり抜け出した。 (嘘だったらいい。でもきっと事実なんだろう。そんな諦めを持ちながら、おじいちゃんに手紙を書いた) 2012.8.11 三笠 |