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「おかえりなさい。マクゴナガルにバレると不謹慎だとか言われるから今はこっそりしてるけど、すっごい騒ぎになってたわよ」


部屋に戻ると真っ先にそんな言葉が降ってきた。
そもそも、寮に入った時点ですごかった。返事はどうしたのかという質問が真っ先に飛んできて、ジョージが私の手を握って「こうなったよ」と一言言ってまた歓声が上がった。
騒がしい周りの空気に圧倒されながらも、ジョージが手を引いてくれて女子寮まで導いてくれた。たぶん、私だけだったらたどり着くのにすごく時間がかかったと思う。少しだけテンションが低かったのは、さっきの会話が後を引いてる。
キス、が嫌だったのかと訊かれたら、嫌ではなかったと答える。
じゃあなぜ拒んだのかと訊かれたら、―――私にもわからない、と答えるしかない。
ただパニックになって、呼吸が追い付かなくて、どうすればいいのかわからなくなって、距離を取ってしまった。


「どうしたの? なんか落ち込んでない?」
「…うん、ちょっと」
「みんな騒いでたし、なにか嫌なこと言われた?」
「ううん。大丈夫。ちょっと疲れちゃっただけ」


あなたがそう言うときは大体なにか悩んでいるのよ、とアリスは言った。
それに言葉を返すことはせず、ベッドに潜り込むと、すぐに眠気が襲ってくる。


「もう寝るの?」
「んー…、ううん、シャワー浴びてこなきゃ…」
「今にも眠っちゃいそうよ」


アリスの言葉への返事すらなおざりで、それでもどうにか身体を起こす。
ぼーっとしながら、今ならシャワールーム空いてるかなあと考えてみた。


「…そういえば、ポッターたちは帰ってきた?」
「ううん、まだみたいよ」
「そっか。また揉め事に巻き込まれてるんだね」


なにもなければいいけど、とつぶやくけど、すぐにアリスに「それはありえないわね」と一刀両断された。
生き残った少年は、生き続けるのにも大変なのかとぼんやり思う。


「あなたは巻き込まれないといいわね」
「えっ?」
「えじゃないわよ。ウィーズリーと一緒にいるの、結構心配なのよ」


特に今までジョージといることでなにかが起きたこともなく、私は首をかしげた。ジョージとフレッドの企む悪戯も、私単独になにかが起きることもないし。


「ジョージと一緒にいても、なにも危険なことはないよ?」
「まあ…今のところはね」
「これからなにか起きるっていうの?」
「去年の騒動と、今年の騒動。これからもなにか起きる気がするの」
「でもそれは、ホグワーツの人間なら誰だって危険だったし、…ジョージと一緒にいると危険が増すなんてことは」
「そう、そうね。うん、そうだといいわね」


変な濁し方をして、アリスは会話をやめた。
どういうこと、と追求するのも不自然な気がして、なんとなくその会話はおわった。
すっかり目が覚めて、私は急いで着替えを持ってシャワーへと急いだ。
なんでだろう、嫌な予感がする。



2012.12.29 三笠