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どうにも沈んだ気持ちを抱えたまま、荷物を持って部屋に戻ろうと腰を上げた。
すると、丁度目の前をパーシー・ウィーズリーさんが通り過ぎた。
監督生のバッチがきらりと光る。


「やあ、宿題かい?」
「あ、はい。見回りですか?」
「ああ、それも兼ねてね。弟たちが馬鹿をやってないかと思ったんだけど、――杞憂だったようで良かったよ」


弟、というのがジョージとフレッドのことだということはもうわかる。
ロンも含まれているかどうかは怪しいところだ。
パーシーさんとはほとんど話したことがないけれど、相当な野心家で首席を狙っているとは聞いたことがある。


「お節介かもしれないけど、少しいいかな」
「え? あ、はい。なんですか?」


前置きをしてから、パーシーさんは話し始めた。
なんだろう、と疑問に思いながらも、この人との共通点なんてたった一つしかないってすぐに気づいた。


「君はジョージと付き合ってると聞いたことがあるんだけど」
「! え、」
「はっきり言ってあんまりお勧めしないよ。君は成績優秀だし真面目だ。来年は監督生に任命されるかもしれないのに、ジョージと付き合っていたらなにかトラブルに巻き込まれるかもしれない」


アリシアに続いてこの人もかと思うと、さらに気分が沈んだ。
私は監督生や首席を狙っているわけでもないし、ジョージと一緒にいて嫌な目に遭ったことなど一度もない。
一緒にいる人を危険にさらすような人ではないことくらい、パーシーさんだってわかっているはずなのに。


「…パーシーさんは、誰かにお勧めされたら付き合うんですか?」
「え?」
「監督生とか首席とか、どうでもいいんです、わたし。そりゃあ、任命されたら嬉しいけど。でも、そのためになにかを我慢するとか、諦めるとか、そういう対象じゃないんです」


生意気言ってごめんなさい、と謝った。
でも、言わずにいられなかった。優先順位はみんなそれぞれ違う。自分の尺度でばかり考えてしまうのはわかる。けど、私には成績よりもなによりもジョージが大事だって、それだけは譲れなかった。


「―――ごめん。失礼だった。謝る」
「…いえ、そんな。あの二人と一緒にいると、たまに不安になりますよね、わかります」
「立場も関係もすべて取り去って、遠くから眺めているだけなら、あの二人は楽しいやつらだって、僕だってわかっているんだけどね」


君がそう考えるならいいと思う、とパーシーさんは言った。
きっと、パーシーさんは監督生という立場では言わずにはいられなかったんだろう。自分を困らせる弟たちは嫌いじゃないけどやはり手のかかる弟で、兄としての責任感があるから弟たちを認めきれないジレンマを抱えている。


「それと、―――申し訳ないんだけど、君、ジニーとは仲が良かったかな? 最近元気がないみたいなんだからどうにかしたいなと思ってるんだけど」


弟妹思いのパーシーさんは困ったように笑った。
ふと、目の前の彼と同じ真っ赤に燃えるような髪のジニーの様子が思い出された。



2012.1.10 三笠