21


玄関ホールの掲示板に人がたくさん集まっていた。
身長の高い高学年が前にいて、掲示板になにが貼られているのかまったく見えない。
知り合いも見当たらず、ぴょこぴょこと小さく飛び上がってみるけれど、やはり見えない。
後でまた見に来ようかなあと思い始めたそのとき、後ろから肩を叩かれた。


「やあ、。気になるのかい?」
「あ、セドリック。気になるけど、全然見えないの。セドリックの身長なら見える?」
「もちろん。決闘クラブのお知らせだって」
「決闘クラブ?」


なあにそれ?と聞くと、セドリックはくすりと笑った。
決闘クラブなんて聞いたことがない。
なるべくなら決闘なんてしたくもないし。


「君は興味なさそうだな。決闘の練習をするクラブだよ。決闘の作法は知ってるかい?」
「うん、知ってる。向き合ってお辞儀をして、三秒数えて、同時に魔法をかけるんでしょう?」
「そうそう。なんだ、ちゃんと知ってるんだ」


以前、なにかの授業で聞いた気がする。
興味はないし、可能ならやりたくはないけど、常識と言われるような内容なので、一応知ってはいる。その程度だ。
ただ、男子は好きそうだなあ…とぼんやり思った。


「で、君は決闘クラブに参加するのか?」
「ううん、興味ないかな」
「僕は行くよ」


なんの迷いもなくセドリックは言った。予想外ではない。でも、迷いも恐怖もないその一言がなんだか格好いいなあって思った。思っただけ。


「…怪我はしないでね?」
「ありがとう。気をつけるよ」


私の頭を軽く撫でて、セドリックは自分の寮の方へと歩いていった。
ジョージやフレッドは参加するんだろうなあ、という予感のもと、私も自分の寮のほうへ歩いて行く。
たぶん私よりずっと早く、決闘クラブのことは知っているだろうけど、ちょっと話してみたいな、なんて。


(興味のないことだって、ジョージのことを考えた途端に色づいて見えるの。恋ってすごいなって、おもった)


2013.12.22 三笠