玄関ホールの掲示板に人がたくさん集まっていた。 身長の高い高学年が前にいて、掲示板になにが貼られているのかまったく見えない。 知り合いも見当たらず、ぴょこぴょこと小さく飛び上がってみるけれど、やはり見えない。 後でまた見に来ようかなあと思い始めたそのとき、後ろから肩を叩かれた。 「やあ、。気になるのかい?」 「あ、セドリック。気になるけど、全然見えないの。セドリックの身長なら見える?」 「もちろん。決闘クラブのお知らせだって」 「決闘クラブ?」 なあにそれ?と聞くと、セドリックはくすりと笑った。 決闘クラブなんて聞いたことがない。 なるべくなら決闘なんてしたくもないし。 「君は興味なさそうだな。決闘の練習をするクラブだよ。決闘の作法は知ってるかい?」 「うん、知ってる。向き合ってお辞儀をして、三秒数えて、同時に魔法をかけるんでしょう?」 「そうそう。なんだ、ちゃんと知ってるんだ」 以前、なにかの授業で聞いた気がする。 興味はないし、可能ならやりたくはないけど、常識と言われるような内容なので、一応知ってはいる。その程度だ。 ただ、男子は好きそうだなあ…とぼんやり思った。 「で、君は決闘クラブに参加するのか?」 「ううん、興味ないかな」 「僕は行くよ」 なんの迷いもなくセドリックは言った。予想外ではない。でも、迷いも恐怖もないその一言がなんだか格好いいなあって思った。思っただけ。 「…怪我はしないでね?」 「ありがとう。気をつけるよ」 私の頭を軽く撫でて、セドリックは自分の寮の方へと歩いていった。 ジョージやフレッドは参加するんだろうなあ、という予感のもと、私も自分の寮のほうへ歩いて行く。 たぶん私よりずっと早く、決闘クラブのことは知っているだろうけど、ちょっと話してみたいな、なんて。 (興味のないことだって、ジョージのことを考えた途端に色づいて見えるの。恋ってすごいなって、おもった) 2013.12.22 三笠 |