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ホグズミードで、キスをした。
少し乾燥した唇。それが繰り返すたびに生暖かく湿り気をおびていくのがわかった。
寒い寒い雪の日だったのに。


体中がすごく熱かった。


「……こーら! 、聞いてる?」


はっと辺りを見渡すと、アリスとアンジーがそこにいた。
まずいまずい。談話室で話してるとこだった。


「ご、ごめん。ぼーっとしてた」
「ったく、もう。……ねえ、だったら、わかるんじゃないの」
「なにを?」
「ほらぁ…、あの、秘密の部屋のことよ」


声を潜めたのは、周りに人が多かったからだろう。
私の力を知っているのは、実はとってもとっても少人数。(数人の友達と、ジョージとフレッド。それに一部の先生方のみ)


「調べてないよ。ネズミと全然会えないし、鳥も最近はホグワーツを避けてる」
「会えないって?どういうこと?」
「いないの。前はよく会えてたのに、姿を見せないの。たぶん、いるんだと思うよ。あの子たちが逃げ出すような、なにかが」


それがなにかはわからないけれど。
そう言うと、アリスとアンジーは背を震わした。
得体の知れない何かはこわい。もう何人も被害者は出ているし。


「まあ、クリスマス休暇はすぐだよ。その間に先生たちがどうにかしてくれるかもしれないし。大丈夫だよ」
「そう、そう、ね。きっとそうだわ」


二人はなんだか気を紛らわすかのように、明るい声を出した。
本当はきっと、大丈夫なんかじゃない。
大丈夫だったら被害者なんて出ていない。




2014.8.25 三笠