短いはずなのに長かったクリスマス休暇を終えた。 休暇だったはずなのに、どっと疲れてしまった。実家の動物たちと遊んだのは楽しかったけれど、けどそれ以上に重たいことをいろいろと知ってしまった。 なんだか気だるい体を引きずって寮へと戻り、部屋でコートを脱いだ。 みんな談話室にいるのか、だれもいない。 今のうちにとスーツケースの中身を全て出し、片づけをしてから談話室へと降りていった。 「あ、おかえり」 「、アンジー」 談話室では既にアンジェリーナやアリシア、フレッドにジョージ、が話していた。 ジョージの目の前にいたアリシアを見て、複雑な気持ちになったけれど、ぐっと飲み込んだ。 「ただいま」 「おかえり。休暇はどうだった?」 アリシアと並んで座っていたソファで、アンジェリーナが少し詰めてくれて、その隙間に座った。フレッドの前。ジョージと一番遠い席。なんだか少し落ち込んだ。 「なんだか疲れちゃった。いろいろ家のこと手伝ってたら、あんまり遊べなくて」 「そうなの? クリスマスのご馳走は?」 「全部私とナーレで用意したから、もー大変だった。チキンの予約くらいしておいてくれればよかったのに」 結局チキンはなくて、分厚いハムを買った。ナーレはナーレで、おじいちゃんに仕事を言いつけられていたみたいで、クリスマスの準備まで手が回らなかったみたい。私なんかよりもずっとたくさん仕事をしていたから仕方がない。むしろ私の失態だ。 「みんなはいつも通り? アンジーとアリシアは実家に帰ったんでしょ? フレッドとジョージは、ホグワーツに残ったんだっけ」 「ああ、そうだよ。いつも通り、人の少ないホグワーツで快適な休暇だったよ」 「でも、よくホグワーツに残ったわよね。2人とも怖く…はないか」 「秘密の部屋の化け物のことかい? 怖くはないさ。人通りの少ない道で低学年とか幽霊とかを石にするくらいしかできないのに、どうして怖がらないといけないんだ?」 「石にされても元に戻れるらしいしな」 2人ともどちらかというと愉快に思っているようで、恐怖はまるで感じていないようだ。 アンジーもアリシアも信じられないといった顔をしている。 「は、ホグワーツに何がいるのか大体分かってるんじゃないかって思うんだけど」 アリシアが、ぽつりとそんなことを言った。 何を言われるのか想像がついて、一瞬でこの部屋の温度が急激に下がった気がした。 「だって、の家はあの、家じゃない…。魔法生物に関してはあなたの家以上に詳しい家はないわ。秘密の部屋にいる怪物についてもなにか知ってるんじゃないかって、みんな言ってる。ひどい噂だと、継承者はもしかして、なんじゃないかって」 「アリシア。それ以上言ったら、わたし、怒るわよ」 アンジーが、少し低い声を出して、アリシアを睨み付けた。 秘密の部屋の向こうにいる怪物のことを、私なら知ってるんじゃないかって思うアリシアは、たぶん何も間違っていない。前にハグリッドじゃないかって噂を聞いたこともある。(けど、ハグリッドには無理だろうということでオチがついていた) 私の家の歴史は古いし、ホグワーツに封印したんじゃないかって、そんな話は私の耳に入っていた。 「…ごめんね、なにも知らない。役に立てなくてごめん」 先に行くね、と一言告げて席を立った。これ以上、アリシアといて気分を悪くしたくなかった。クリスマス休暇で疲れていたし。 自室に戻って、シャワーを浴びてすぐに眠った。朝起きたら、このもやもやした気持ちがなくなっていればいい。そう思った。 2015.3.1 三笠 |