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数日後、ジニーは日記帳を捨てた。
あの日記が結局どういったものなのか全くわからなかったけれど、そのことを伝えに来たジニーの顔が少しだけ晴れやかだったから、気にしないことにした。


「なんか、機嫌よくない?」
「え? そう?」
「んー、なんとなくだけど。なんかあった?」


フクロウ便を出したくて、小屋までジョージと歩いていた。


「…ちょっと、いいことあったかな」
「へえ」
「うん、教えられないけど、あったよ」
「なにそれ。気になる」


するりとジョージの指が、私の指に触れた。指を絡めると、なんだか気持ちが高揚した。
フクロウ小屋は名前の通りフクロウ便を出す人と、フクロウの世話をする人しか近づかない。世話をするのは、生徒や先生じゃなく、屋敷しもべ妖精だから、やはりあまり近づく人はいない。
だからなのか、こういった場所ではジョージはいつもより少し積極的だった。


「教えて」
「だめ」
「なんだよ、ケチだな」


拗ねたようなことを言うけれど、本当に拗ねているわけじゃない。
子供みたい、なんて失礼かな。拗ねてる様子がなんだかすごくかわいくて、私より高い身長を見上げながら、思わず笑ってしまった。


「なに笑ってんの」
「ううん、なんでもないよ」
「うそつけって」
「ほんとに、ほんとになんでもないの。ただ、」
「ただ?」


握っていた手に力を入れて、頭をジョージの腕にもたれさせた。
えへへと笑うと、ジョージがこちらを見ているのがわかった。


「幸せだなって、思っただけ」


つぶやいた。すると、ジョージは顔を赤らめてそっぽを向いた。
照れてるときの仕草。


「…ジニーがちょっとだけ元気になったみたいで、それで嬉しいなって」
「ん? そうだった??」
「そう。ちょっとだけね」


ハリーとなにかあったかなって、ジョージは言った。
繋いだ手が熱かった。
フクロウ小屋はすぐ近くだ。



2015.7.12 三笠
甘めなシーンが書きたかった