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普段使う人のほぼいない、マートルの女子トイレ。そこで人と出くわすなんて、初めてことかもしれない。それも、なんで、男子。


「あ、アー、? 何でこんなところに、」
「そ、そっちこそ。ここは女子トイレ、のはずだけど……」


慌てるロンからハリーに視線をずらす。洗面台の形が変わっていて、なにやら穴が出ていた。もしかして、これが秘密の部屋の入り口なんだろうか。


「……それが、秘密の部屋の入り口?」
「!、わかるの?」
「ジニーの痕跡を辿ってきたの。此処に来たのは確かで、他に可能性がないのなら、」


まさか洗面台が入り口だなんて。
そもそも、嘆きのマートルのいる女子トイレなんて、あまり来ないから、気づきようもなかった。


「入るの?」
「ああ。……まずは、」


ハリーは、杖をロックハート先生に突きつけた。慌てて先生は後ずさるが、ハリーは追いかける。


「まずは、ロックハート先生から」


情けないような声を上げて、先生は秘密の部屋の入り口(といってもむき出しになったパイプのようにしか見えないけど)へと落ちていった。
先生の無事を確認した後、ハリーとロンも同じように滑り落ちていく。さすが、勇敢なグリフィンドール生。わたしなんて怖くて足が竦みそうなのに。そう思ったけれど、ジニーがもし命の危機にあったら。先生はともかくとして、ハリーとロンだったら治癒魔法を知らないと思う。そう考えたら、進むしかなかった。一緒にいたネズミに、誰でもいいから先生に渡して欲しいとメモを持たせて、私もひとつ深呼吸をしてから秘密の部屋の入り口へと足を進めた。
ジニーが無事でありますように。




2015.12.26 三笠