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結局、すぐにアリスに叩き起こされることになった。夢も見ないほどぐっすりと眠っていた。ルームメイトは既にいなくて、私はのろのろと身支度を整えて宴会へと向かった。途中で、昨日起きたことが噂されていることに気づいた。皆、秘密の部屋の存在や、ジニーが助かったこと、ハリーが助けたことなどを噂していた。私のことはなにひとつ噂になっていないようだった。ほっと胸を撫で下ろした。


「ほんとは、あなたも関係してるんじゃないの」
「アリス?」
「あなたが寮を出たこと、ちゃんと知ってるわよ。それに、あなたは魔法生物を使えばなんだって知ることができるじゃない。だから、あなたもなにかしたんじゃないの」
「わたしはなにもできなかったよ」


できなかった。うん、その言い方が正しい。すべて、ハリーがやったこと。そう言うと、アリスは、納得したのか一度口を閉ざした。


「良かったわね。無事で」
「うん、良かった」


私へ問いただすこともなく、アリスとはもうこの話はしなかった。けれど、ご馳走を食べている間、周りはみんなこの話題をしていた。
ウィーズリー兄弟たちは、遠くのテーブルに集まっていて、とても仲が良く、時折喧嘩のようなことをしながら騒いでいた。
そんな風景が、なんだか嬉しくて、思わずにやけてアリスに「それやめて」なんて言われてしまった。けど、そのくらい、嬉しかった。


「行かなくていいの? ジョージのとこ」
「うん。家族で楽しんでいるところなんだから、邪魔しちゃ悪いよ」


宴の最中、様々な発表があった。まず、今回の騒動についての概要。ハリーやロンに『ホグワーツ特別功労賞』が与えられること。グリフィンドールにそれぞれ200点が与えられること。石にされた人たちが元に戻ったこと。ハグリッドが戻ってくること。期末試験が無くなったこと。ロックハート先生が治療のため教師を辞めること。
嬉しいことばっかりだったから、周りはものすごく騒がしくて隣の声も聞こえないくらいだった。
(私については何も言わないように先生にお願いしたから、私の名前は出なかった。功労賞はお断りしたし、私が関わったことは広まらないはず)

宴は明け方まで続いたらしい。途中で私は体力の限界を感じて、自室のベッドへと入り込んだ。


2015.12.26 三笠