07


「なに話したんだよ?」


気持ち悪いくらいに緩んだ口元の、僕の片割れ。ほんとは話したくなかったけど、協力してもらったわけだし(頼んでないけど)、簡潔に会話の内容を話した。
そしたら、フレッドは口元に笑みを浮かべたまま、相槌を打ちながら聴いていた。


「へえ、進歩したじゃないか」
「まあ、それなりにね。とりあえず普通に話せるようにはなったと思う」
「ふうん、は悪い奴じゃないし、お前はお前なりにのんびりやればいいさ」


ただしにばっかり気をとられて、ほかの事を蔑ろにするなよ。
そうフレッドは言った。将来の僕たちの夢――悪戯専門店を開くこと-―のことを指しているのであろう。僕はもちろんだと頷いた。
のことはもちろんタイセツ、だけど。僕たちの夢だって、それと比べられないくらい大切なんだから。






「「おはよう、」」


次の日の朝、朝食の席でを見た。女友達と会話していたところを、後ろから肩を叩いて挨拶する。…フレッドと同時に。
その瞬間には肩を震わせて、勢いよく振り返った。


「わっ…、あ、おはよう」
「お隣いいかい?」
「え、ええ。どうぞ」


フレッドはそんな会話をして、僕をの隣に座らせ、そして自分は僕の隣に座った。
まだ朝食は用意されておらず、人も疎らだ。僕たちはいつもよりも随分早い時間に起きたことが分かった。
突然隣に座ってきた僕たちに、の友人たちが目を丸くする。


「ねえ、!ウィーズリーくんたちといつ仲良くなったの!?」
「え…、昨日少しだけお話しただけよ」
「知らなかったわ!貴女が男の子とお話しするなんて殆ど見たことがないっていうのに――!しかも相手があのウィーズリーなんて!!どうして言ってくれなかったの!!?」
「ちょっ、ちょっと!適当なこと言わないで。大体私は――」


は友人たちの方に視線を向けて話を続ける。
つい耳を傾けてしまうけど、内容的にも僕が聴いていいものなのかちょっと迷ったから、フレッドへと視線を向けた。そしたら、フレッドは必死で笑いを堪えていて、どうしたのだと首をかしげた。


「おいフレッド、どうし――」
「いや。なんとも面白い状況になってると思って」
「なにが面白いんだ。僕にはちっともわからないよ」
「分からなくてもいいさ。そのうち分かるし」


それに、とフレッドは続けた。フレッドの視線は僕の先を見ていて、そちらに視線を向けようかとも思ったけどすぐにやめた。そんなことしたら、確実にが視界に入る。もし視線が合いでもしたら、平静でいられる自信がなかった。(今でも普段の7割増しで心臓が早いと言うのに!)


が聴いている前で言っていいのか?」
「…後で頼むよ」
「そうだろう、そうだろう」


にやにやとフレッドの笑う顔に、「気持ち悪いよその顔」と言ってやると、「同じ顔だろ。だからおまえも気持ち悪いのさ」と言われた。なんて言い返してやろうかと考えていると、朝食の時間になったのか、テーブルに朝食が現れた。それを見て、早速俺たちは食事を開始した。





2010.09.01 三笠