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夕飯は、わざと3人から離れて座った。
他の友達の隣に座って、たくさん話して、食べて。
それなのに、胸の痛みはじわじわと侵食してきて、さっきの出来事が頭から離れなかった。
忘れたいのに。離れてくれない。

皆はもうすぐそこまで迫っているクィディッチの試合についてや、その先のホグズミート行きについて、目を煌かせて話している。
私もそれに話を合わせながらも、なんだかずっと気分は落ち込んでいた。
クィディッチを見ることに躊躇いさえ感じていた。ホグズミート行きだって楽しめると思えなかった。
ずっと楽しみにしていたのに。


食後、すぐに部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。
他のルームメイトたちは宿題をしていたり談話室に行ってお喋りを楽しんだりしている。
ベッドの脇の棚から、ハロウィンの時にジョージから貰ったお菓子を一つ取り出した。ルームメイトに勝手に食べられないように鍵をかけて大切に大切に食べている。
そのお菓子を見ながら、ふとハロウィンのことを思い出した。
―――寒い廊下、熱い吐息、熱の篭った声、背中に回った腕。
それに、低い声で呼ばれた、ファーストネーム。
思い出しただけで胸の奥が熱くなって堪らなくなる。私の呼吸まで熱くなる。ああ、もう。もう。私おかしい。ハロウィンのときから、…ううん、もっと前からだ。


ー?どうしたの?具合でも悪いの?」
「えっ、ううん、そんなことないよ!」
「そう?じゃあいいけど…」


ルームメイトのアリスに声をかけられて、慌てて顔を上げて返事をする。
アリスは宿題をしていた手を止めて、こちらに来て私の額に手を当てた。ぴたっと手のひらが当てられて、同じくらいの体温に少し落ち着く。病気じゃないから熱はないんだけどなあ、なんて思った。


「熱は無いみたいだけど…。なにか悩んでるんなら相談に乗るわよ」
「う、うーん…。あ、あのさあ、アリス」
「なあに?」


言ってしまおうか黙っておこうか、少しだけ悩む。
でも、ずっと自分の中に溜め込んでいたとしても、解決するとは思えなかった。なにより、私はこのあまりに安定しない感情の原因に見当もついていなかった。
幸い、今この部屋には私とアリスしかいないし、相談するとしたら今だろう。
そう考えたら、いても立ってもいられなくなって、私は上半身を上げて、口を開いていた。

ジョージと、アンジェリーナのこと。
ハロウィンのこと、今の、私の想い―――。
アリスはなにも言わずに聴いてくれた。
だからかな。すべて話し終えたとき、なんだか気持ちは軽くなっていた。



2010.02.14 三笠
(アリスはオリジナルキャラです!苦手な方がいらっしゃいましたら申し訳ありません…今後も少し登場予定です)