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ジョージが、好き。
そう意識したら、なんだかすべてがすんなり受け入れられるような気がした。今までの不可解な感情。苦しいのもせつないのも嬉しいのも、ぜんぶ。
でも、意識したら今までのように普通に接せられる自信がなくなった。きっとまた、挙動不審になっちゃう。


「アリス。わたし、どうしたらいいの」
「あら。なにか悩むことがあるの?」


今もぎゅっとアリスにしがみついたまま。私は口を開いた。
アリスは同い年とは思えない(なんて失礼だけど)ほど大人っぽくて、可愛くて、綺麗で、それで性格も良くて包容力だってある。
こんな子だったら、ジョージも好きになっちゃうのかな、なんて心の片隅で思った。


「ジョージと、普通に話せると思えなくて…」


どきどきするの。緊張するの。何を話せばいいのかわからないの。
声を、顔を、雰囲気を、思い浮かべただけで鼓動は速度を上げる。それなのに、今までどおりに話すなんて、出来るはずがない。


「普通とか、今までどおりとか、そんなの出来るわけないのよ。好きになっちゃったんなら、それに気付いちゃったら、もう無理なの」
「…えっ、じゃあ、どうしたら、」
「一度話してみたらいいじゃない。そうしたら分かるから」


ね、とアリスに言われて、納得はしていなかったけど小さく頷く。
そして、アリスに促されて、私は部屋を出た。目指すは図書室。消灯まではまだ時間がある。きっとジョージはフレッドくんと宿題をしているだろうと予測を立てて、あまり人のいない廊下を歩いた。

吐いた息は白くて熱い。
2人は図書室にいるかもしれないし、いないかもしれない。
そもそも宿題をしているはずなんだから、行ったって邪魔になるだけじゃないの、って思う。…思う、けど。でも、今は素直にジョージに会いたかった。
会って、たくさん話したかった。きっとあんまりうまく話せないけど。それでも良かった。


(会えるだけでも、嬉しいなんて。おとこのひとにそんなことを感じたのは初めてだなあ、なんて)



2011.03.06 三笠