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「…で?結局なに話してたんだよ」
「ただの世間話さ」
「まさか」


が図書室を出るのを確認した後、目の前のフレッドに問い質した。
さっき本を持って戻ってきたとき、後ろ姿でもだって分かってすごく緊張したし嬉しかった。普通を装ったけど、隣に座るのも声をかけるのも僕の中ではすごく勇気が必要だった。
でも、隣に座ったときに感じた違和感。なんとなくの顔は赤かったし、足早に立ち去ってしまった。もしかして邪魔したかな、というのは一瞬過ぎった不安。


「余計なこと言ってないよな」
「言ってないさ」
「本当かよ」
「本当だって」


どうも信じられなくてフレッドを訝しげに見ていると、フレッドは深くため息をついた。そして、面倒くさそうに口を開いた。


に、『ほんとはジョージに会いに来たんだろ?』って訊いたら、真っ赤になって慌ててたよ」
「え?」
「後は自分で考えろよ」


そう言い終わると、すぐにフレッドは自分の課題を終わらせてしまおうと羊皮紙にペンを走らせ始めた。
フレッドの言葉を脳が処理するのに時間がかかった。がフレッドの言葉を聴いて赤くなった理由が、もしも“図星だったから”というものであったとしたら―――。
次いで僕の顔にも熱が集まった。ぎゅっと心臓が締め付けられる。
うわ、あ。もしかしたら。いや、きっとそうだ。

『女の人はね、恋をすると少女に戻るのよ。どきどきして、彼のことしか考えられなくなって、大人のままでいられなくなっちゃうの。彼に関しては嘘をつくのが下手になっちゃうのよ』
ずっと昔、妹のジニーに読み聴かせた本に載っていた言葉を思い出した。
その言葉が本当だとしたら。はもしかして僕のこと、




(好き、なのかもしれない。)


2011.03.22 三笠