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時が経つのは早いもので。
ジョージが好きだと気付いてから既に数日。
その間にジョージと少しはお話したし、何度も見かけたし、時にはこちらから話しかけてみたりして、ほんの少しの進歩はあったかもしれない。
だけど、時が経ってクィディッチシーズンも近づいてきていて、初戦である“グリフィンドールvsスリザリン”には早くから注目が集まっていた。
もちろん、そのクィディッチチームの選手であるジョージにも。


「あ、!おはよう」
「!お、おはよう」


今日は珍しく朝食前にジョージと出会えた。隣で欠伸をしていたフレッドくんにも挨拶をして、アリスと4人で大広間へ歩く。


「練習、どう?上手くいってる?」
「うん、まあね。ウッドが張り切っちゃって大変だよ」
「あはは。暫くはスリザリンにクィディッチ杯とられてばっかりだもんね。仕方ないよ」


胸の内で鳴り響くどきどきにはもう慣れた。慣れたけれど、このどきどきは止まる気配を見せない。普通に話して、普通に歩いているだけなのに、なんだかぎこちない気がする。いつもどうやって話してたっけ、なんて。彼へ恋するだけで当たり前のことすらできなくなっている自分に小さく息をついた。ほう、なんて熱を持った、ため息。



「あら、ウィーズリー!クィディッチもうすぐね」
「秘密兵器はどんな感じなの?」


折角話していたとしても割り込んでくる声。最近はこんなことばっかりだ。
ジョージもフレッドも、そんな声を喜んで受け取るタイプだから、そちらで話が進んで私ばっかり置いてけぼりというのはよくある話。
先行くね、と一言告げて、アリスと広間へ急いだ。申し訳なさそうにジョージがこちらへ視線を向けたのに気付いたけれど、足を止めずに進んでしまう。


「クィディッチさえ終われば、みんなわざわざ割り込んでこないわよ」
「…そうかな」
「そうよ。クィディッチが終われば、次のホグズミードの方に興味は移るわ」


きっぱりと言い放つアリスは少し格好いい。正直なところ私はクィディッチが終わってたとしても、ゆっくりジョージと話せる日なんて中々来ないだろうなあと思ってた。特別な関係でないってこともあるし、フレッドくんとジョージは学校内ではかなりの有名人。素敵な悪戯、成績だって(ちゃんとやれば)悪くないし、2人は面白いって評判だ。私じゃなくたって、彼らと話したい人はたくさんいるだろう。


「…ホグズミードかー」
「誘ってみたらどう?」
「え、」
「一日ゆっくり一緒にいられるわよ」


(瞬間、ホグズミードで一緒に歩くジョージの姿が思い浮かんだけど、すぐに頭から消し去った。だって、そんな、夢みたいなこと、)

(起きるわけがないよ)



2011.4.27 三笠