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「で、もうのことは誘ったんだよな?」
「…フレッド、」
「なんだ。やっぱりまだだったのか。いい加減見ているだけなのは歯がゆいな」


よく言うよ、と声には出さずに心の中でつぶやいた。フレッドはすれ違い際にクィディッチの応援をしてくれる何人かに返事をしつつ、その間に話を続ける。
いっそ放っておいてくれと言ってしまいたいし、言ってしまってもいいんだけど、フレッドがその程度で諦めるわけもなく。
僕は小さくため息をついて、のことを思い浮かべた。


「…あえて誘わなくてもいいんじゃないかと思ってるんだけど」
「なんで」
「いや。なんていうか。一応初めてのホグズミードだし、も友達と回ったほうが楽しいんじゃないかって思って」
「途中で合流の約束は?」
「…それもなんか、迷惑じゃないかと思ったり」


と一緒にいたいけど、彼女だって友達はいるしホグズミード行きは年に数回しかない貴重な日だ。(まあ学校からの抜け道を知っている僕とフレッドにとってはそうでもないけど)それを僕と一緒に過ごしてくれるかって考えたら、なんていうか、そうでもないんじゃないかって思ってしまう。僕らしくない。いつになく弱気みたいだ。


「…ジョージ、おまえ、なんか変なものでも食ったのかよ」
「そうじゃないって。だって、考えてもみろよ。初めて話してから2ヶ月も経ってないんだぞ。そんな程度の友達に二人でホグズミード行こうなんて言われたらどう思う? 正直困るだろ」
「それは、相手がまったく意識してない場合だろ」


フレッドが、やれやれとでも言いたげに両手を肩の辺りまで上げた。
そしてにやりと笑みを浮かべてこちらを見る。


「俺はお前に、勝算のない賭けを勧めたことなんて一度たりともないはずだ」


今まで生きてきた中でお互いの目的が違ったことは一度たりとて無くて、お互い協力するのが当たり前になっていたから当然だったのかもしれないけど。
でも確かに、フレッドは僕に対して“勝算のない賭け”を勧めたことはなかった。僕の敗北を望むようなやつじゃないことは確かだ。
でも、今回は?
フレッドはそんなにと話してないし、について僕にアドバイスできるほどの何かを知っているとは思えない。それなのに、妙に自信あり気できもちがわるい。まるでが僕のことを好き、みたいな。そんな体で話を進めてくる。


「これ以上グズグズしてるんだったら、僕からアンジェリーナに頼んじまうぞ。“15時に三本の箒で会いましょう”ってな」
「え、おい、それはやめてくれよ」
「だろ。だったら自分から言うことだな」


にやにやと笑みを浮かべながら、フレッドは少し前を歩いた。
僕は慌てて追いかけながら、ふとのことを考えた。


(フレッドの言うように、勝算の有る賭けならいいのに)
(そしてそれが分かっているなら、僕は戸惑いなく彼女に声をかけられるのに)



2011.6.23 三笠 悶々してるところが書きたかっただけ。