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「ジョージもフレッドもモテるんだよな。そういえばビルもチャーリーもそうだった」
「でもあの人は意外だったな。ジョージってフレッドと一緒にいろいろ悪戯して悪ガキ大将って感じだから。あんな真面目そうな人と合うのかな」
「あら。意外といいカップルだと思うわよ。そんなことより、早くハグリッドのところへ行きましょう。約束の時間に遅れちゃうわよ」



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「やあ。ジョージじゃなくて悪いけど、ちょっといいかい?」
「構わないけど…」


廊下を歩いていたら、フレッドに話しかけられた。真っ黒のローブを揺らしながら軽く駆けて来て、私の顔を見るなりにやにやと笑みを浮かべた。
どんな用事なのか全く想像できない上に、なんだかあまり良くない予感がして、私は眉を寄せた。


って、ジョージのこと好きなんだろ?」
「! っな、なに言って…!あ、貴方といいロナルド・ウィーズリーといい、どうしてそう…!」
「は? ロンがどうしたって?」


首をかしげたフレッドくんに、先ほどのことを話す。図書室での出来事からわかっていたけど、彼にはとっくに私の想いなんてバレてるもの。隠したってしょうがない。
すべてを聞き終えて、フレッドくんは呆れた顔をした。


「ロニー坊やにも気付かれるなんて、キミ、本当に分かりやすいんだな…。ある意味尊敬するよ」
「…褒めてないでしょ」
「正直すぎるのは悪いことじゃないさ。君は損することが多いかもしれないけど」


むう、と少しむくれていると、フレッドくんは大きな手で私の頭をわしゃわしゃと荒く撫ぜた。妹にでもするような手つきにびっくりして、思わず顔を上げる。その先の、ジョージと同じ顔が笑みを浮かべていて、観念、した。ああもう、敵わない、って。


「…ジョージに関しては、フレッドくんの思ってるとおり、だよ。なんでわざわざ聞きに来たの?」
「や、確認してなかったから、一応聞いておこうかと思って」


あまり人はいないが、ほどほどにざわついていて、たぶん今の会話を聞いた人はいない。それにはちょっとだけ安心したけれど、人の想いを言いふらすようなことはしないでほしい。


「…それで、ものは相談なんだけど、僕としてはキミたちがくっついてくれるのは構わないし、むしろ応援してるくらいだ。だから余計なお節介かもしれないけど、キミ、今度のホグズミードでジョージと会ってくれないかな」


一度もつっかえずに、そんな言葉を言い切った。
正直私は、この人はなにを言っているんだろう、と思った。


「ホグズミードだったら、前にジョージから誘われたけど」
「えっ、うそ」
「ほんと。この後、ジョージとそのあたりについてちょっと話すつもり」
「うっわ、まじか。くっそー…、あいつ黙ってたな…」


フレッドくんは悔しそうにそんなことを言って、そして少しだけなにかを考えている様子だった。なんだか、ジョージとフレッドくんがこうして別々に行動しているのってなんだか違和感があるなあ、なんてちょっとだけ思った。(だって、授業でも寮でもいつも一緒だって、聞いたことあるもの)


「なあ、」
「え?」
「もし2人が付き合ったら教えてくれよ」


約束、と勝手に言って勝手に歩き出してしまった。
私は一瞬追いかけようとして、でもやめてしまった。


「つ、付き合えると思う…?」


小さく呟いた言葉はたぶん聞こえていない。
聞こえなくて良かったと思った。告白どころか一緒にいるのも儘ならないのに、付き合えるはずが、ない。



(つきあえなくてもいいから、一緒にいたいよ)



2011.08.23 三笠