「じゃあ、私たち、先に帰ってるわね」 「うっ、うん…。また後でね」 「…そんなんでマトモに話せるのかしら」 待ち合わせの郵便局の少し前で、アリスや他の友達と別れた。 そのとき、アリスは少し眉間にしわを寄せて、小さく息をついた。こういうときに無闇に優しい言葉をかけないのは相変わらずだ。 「大丈夫だよ、たぶん」 「…あーもう、ハイハイ。あとで」 バイバイ、と小さく手を振ってすれ違う。 角を曲がればすぐに郵便局だ。あ、やばい。アリスと話していたときには少し落ち着いていた緊張がまた戻ってきた。どくん、どくん。心臓が音をたてて、手が汗ばんで、ああでも会いたい、会って話したい。そう思う。 「あ、」 「!」 緊張で俯き加減で歩いていたためか、すぐに気付かなかった。前から歩いてきたのは、待ち合わせの相手、ではなくて、その兄弟であるフレッドくん。友達のリー・ジョーダンも一緒にいた。 「ジョージ、もう待ってるよ」 「う、うん…」 楽しんで、と一言言って二人は去って行った。ジョーダンはこちらを興味ありげにじろじろと見ていたけど、フレッドくんに急かされて小走りで追いかけて行った。 それを見送って、よし、と気合をいれて角を曲がる。フクロウたちがたくさんいる中、ジョージはそわそわしながらあたりを見渡していた。 「ジョージ、」 「! …よかった、来てくれた」 「えっ、や、約束すっぽかしたりしないよ」 明らかにほっとしたような様子のジョージを見て、ちょっと不満。約束を破ったり忘れたりするような人間だと思われていたならショックだ。 駆け寄ってきたジョージは少しあわてたように口を開いた。 「そう思ってたわけじゃなくて、アー、なんていうか、その…ふ、不安だったんだよ」 ぼそぼそと照れくさそうにジョージは言った。 不安、なんてジョージが言うなんて思いもしなかったけれど、気持は私にだってわかる。 「…実は、私も」 「え、も?」 「うん。なんか、すっごい不安だった。いなかったらどうしようとか、がっかりさせたらどうしようとか」 同じだね、と言うと、くしゃりとジョージは笑った。 こういうちょっとした共通点が、なんだかすごくうれしい。 「どこ行こうか。行ってない場所ある?」 「ん、っと。街は一通り回ってみたけど、ジョージは?」 「あれ、街は、ってことはもしかして、叫びの屋敷なんかは…」 「いっ、行ってないよ! …ジョージはそういうの好きそうだよね…」 「もちろん。でもふつーの古い屋敷だったよ。ちょっと忍びこめないかなーと思ったけど無理だった」 「一応誰かの家なんだから、忍び込んだらだめだよ」 「バレるようなミスはしないさ」 「いやあの…、まあいいや…」 じゃあ適当に向こうのほう歩いてみようか、なんてことになって。 少しどきどきしながら、ジョージの隣を歩いた。 2011.2.25 三笠 |