「はい、到着。おつかれさま」 すいーっと上手く地面へと降り立った。すぐにしがみついていた手を離して箒から降りる。 ずっとチャーリーさんの背中に顔をうずめて、腕はチャーリーさんの腰にまわしてぎゅっとしがみついていた。浮遊感がまだ残っている。 足の感覚を確かめるように地面に靴をこすりつけた。 「本当に苦手なんだな。全然力が緩まなくてびっくりした」 「あ、ごめんなさい、もしかして苦しかったですか?」 「いや、それは大丈夫。むしろ女の子に抱きつかれることなんて殆どないから役得だったな」 「え、あ、いえあの」 もしかしたらチャーリーさんにとっては当たり前かもしれないけれど、女の子扱いをされることにすごく、びっくりした。 年相応に扱われることなんてあまりなくて、女の子よりも子供扱いが多かったから、戸惑ってなんて返してよいのか分からなくなってうろたえた。 「そうだ、。君のお祖父さんのオーランドだけど、今はドラゴンたちの近くで観察をしていて、この家にはいないんだ。いるのは僕と同じくドラゴンマスターの数人と、クリスマス休暇で遊びに来ている僕の家族だけ。だからオーランドと会えるのは明日以降となってしまうけど、僕らには気を遣わないでいいからゆっくりしていってくれ。僕らはオーランドをすごく尊敬しているし、そのお孫さんであるが来てくれるのをすごく楽しみにしていたんだ。オーランドのことや君のこと、たくさん話してくれたら嬉しい」 「は、はい。ありがとうございます」 そうさせてもらいます、と言うと、チャーリーさんは苦笑して乱雑に私の頭を撫ぜた。 「敬語も要らないよ。僕は勝手に妹のように接するつもりだから、君も兄みたいに接してくれて構わない。折角のクリスマス休暇だろう? 堅苦しいのは抜きにしよう」 「…えっと、…うん。なるべく、そうしま…するね」 思わず敬語を遣いそうになるのを堪えるけど、チャーリーさんは笑って頭をぽんぽんと軽くたたいた。 こんなお兄さんがいたら、毎日楽しそうだなあ、なんて思ったけど口にはしない。 「逆に気を遣うようなら敬語でも構わないよ。楽な方を選んでくれ」 「あ、はい。じゃあ敬語のほうが、楽なので」 「了解。さて、もう9時か。あとはもう寝るだけだな。早く家に入ろう」 チャーリーさんに続いて家の中に入ると、リビングには10人ほどの人が集まっていた。その中には燃えるような赤毛の人も何人かいて、この人たちがジョージの家族なのかなあ、なんて思った。 「おかえり、チャーリー。その子がオーランドのお孫さんかい?」 「ただいま。そうだよ。彼女が、オーランドのお孫さんのだ」 「です。よ、よろしくお願いします」 何人かと握手をして、どうにか名前と顔を一致させようと頭をフル回転させる。チャーリーさんと同じように陽気で快活で、話しやすそうな人たちばかりだった。 「こんばんは、。私はチャーリーの母のモリーよ。よろしく」 「はい、モリーさん。よろしくお願いします」 「あら、そんなに畏まらなくてもいいのよ。こっちは夫のアーサー。それに娘のジニーよ」 「よろしく、」 ジョージのご両親と妹さん。そう考えるととてもじゃないけど畏まらずにはいられなかった。 三人と握手をしてから、一瞬だけ話題を探して口を開いた。 「私、ホグワーツでジョージたちと同じ寮なんです。よく――あの、談話室などで面白いことをしているのを見て、楽しませてもらってます。弟のロナルドさんともこの間初めてお話ししました」 やはりジョージたちの話題がいいだろうと思って、そんなことを言った。 間違ってはいない。ジョージたちはバカなこともやるけど面白いことも大好きで、よくリー・ジョーダンなども交えていろんなことをいろんな場所でしている。 「あら!そうなの。あの子たちは元気にしているかしら」 「ええ、とっても。休暇前も外で雪遊びをしているのを見かけました」 「ただの雪遊びならいいんだけど。おかしな魔法をかけて誰かに迷惑をかけてなかったかしら」 「いえ、私の知る限りでは人の迷惑になるようなことは――。クィディッチでもビーターとして活躍してますし、あっ、今年はあの有名なハリー・ポッターがチームに入って、初戦を勝ち抜きましたよ」 ハリーの名前が出ると、妹のジニーの顔が少し赤らんだ。 きっと大人ばかりの中で少しつまらなかった中で、知っている名前が出てきて興味をもったのだろう。 「まあ!それは良かったわ。チャーリーもグリフィンドールのクィディッチチームにいたの。もしかして知っていたかしら」 「はい。入学してから全試合を観ていますから。素晴らしいシーカーだったと思います」 「ありがとう。本当に誇らしい息子なのよ」 その後も、モリーさんからビル、チャーリー、パーシー(なんと3人とも監督生を経験しているらしい!すごい)の3人のお兄さんの自慢話を聞き、さらにジョージとフレッドくんの悪戯話を聞き、そしてロンとジニーの話を少しだけ聞いた。 時折アーサーさんとジニーも加わり、ウィーズリー一家の話をたくさん聞いた。 話がひと段落ついたところで、チャーリーさんが来た。 「母さん、は何時間も列車を乗り継いでさっき着いたばかりだ。そろそろ話を切り上げて休んだらどうだい?」 「あら…、そうだったわね。ごめんなさい、。お話はまた明日にしましょう」 「はい。今日は楽しかったです。また明日、お話楽しみにしています」 おやすみなさい、と告げて、チャーリーさんに部屋を案内してもらった。 シャワールームとトイレ、それに空き部屋をひとつ(すでに荷物が運び込まれていてびっくりした)。 そのあとは、軽くシャワーを浴びて歯磨きをしてからベッドに潜り込んだ。 (緊張したけれど、ジョージの家族はみんなみんないい人ばかりで安心した。少しでも気に入ってもらえたらいいな――。そう思った) 2012.7.12 三笠 |