クリスマス当日。 朝起きるとたくさんのプレゼントが部屋中に溢れていた。 一番に目についたのは、フレッドにも届いていて、きっとロンにもパーシーにもチャーリーにもビルにも届いている、ママからの手編みのセーターだ。 すぐに見分けがつくようにか、イニシャルの「G」の文字が大きく編み込まれていた。 「おはようジョージ。メリークリスマス」 「おはようフレッド。メリークリスマス」 同じ言葉を名前だけ変えて繰り返した。 クリスマス休暇中は、この部屋は僕とフレッドの二人だけ。 床に転がっているプレゼントをひとつずつ開けてった。 「たっく、ママさまにも困ったもんだな。僕たちだって馬鹿じゃないんだから自分の名前くらいわかるっていうのに。周りが見分けられなくたってそんなのどうでもいいしな」 「そうだな」 「ん」 「ん?」 フレッドは、いつも悪戯をする時のにやけ顔で自分のセーターをこちらに突き出してきた。僕はそれを受け取り、代わりに自分のセーターを受け渡した。 お互いにそれを着る。 「折角イニシャルが入ってるんだからな。わざわざその通りに着るのもばかばかしいだろ」 相変わらずピッタリのサイズで、当たり前だがすごく温かい。 このイニシャルで何人ひっかかるかな、なんて思うが、そんなことはどうでもよくて、僕はプレゼントを開ける作業に戻った。 「で、からは?」 「そう急くなよ。貰えるかどうかすらわからないのに」 そう言いながらも、僕は包みを開けていきながら、のものじゃないと少しがっかりしていた。最後の一つの包みを開けるまではいつもどおりの友人と家族からのもので、半ば諦めかけていた。けど。 開くと一番上にクリスマスカードが見えた。 「ジョージへ。メリークリスマス。大きすぎないといいけれど。・」と書いてあった。その下には、黒い手袋が1セット。 「手袋?」 「へえ、すげえ。ってそんな器用だったんだ」 「ああ…、何度かマフラーを編んでるのを見たことある」 そっと手に取り、つけてみる。きっとサイズがわからなかったんだろう。少し大きかったが、問題はない。 僕にはできないような細かな模様が編み込んであって、シックですごく格好いいと思った。 「なんだかんだ言って幸せそうでなによりだな」 「えっ、今なんて」 「なんでもねーよ。じゃ、ロンやパーシーの部屋行ってみようぜ」 散らかしっぱなしの部屋をそのままに、僕たちは部屋を出てロンの部屋へと走った。 起きた時と違うのは、青いセーターと、真っ黒の手袋。 今度会ったときなんて言おうか。暫くはこの手袋を見るだけで幸せな気分になれるだろうな、なんて。そんなことを思いながらいつの間にか笑っていた。 2012.7.14 三笠 |