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数占いの授業に行くたびに、セドリックに話しかけられるようになった。
セドリックと話すのは楽しいけれど、なんだか複雑な気持ちだ。
アリスやアンジーにセドリックのうわさを聞いたけど、「あのハンサムな人でしょう?」「えっと、無口な人よね」なんて、曖昧なものばかりだった。でもまあ、いわゆる女たらしでないことは分かったので、まだ、いいけれど。


「もうすぐクィディッチの試合だね。グリフィンドールとハッフルパフの」
「ああ、そうだね。観に行くの?」
「もちろん。グリフィンドールの試合は全部観てるよ」


セドリックと話しているのに、前回の試合の様子が思い浮かぶ。
去年まではボールの動きばかり気にしていたけれど、前回はジョージの動きが気になってしまっていた。あと、前回はなんだかポッターの箒が変な動きをしたんだっけ。それも気になったなあ。


「実は僕、結構飛ぶのが好きでさ。いつか、クィディッチのチームに入ろうと思ってるんだ」
「…え?」
「今は特に空いてるポジションはないけど、来年再来年には卒業する人もでてくるだろ? テストを受けて受かれば、チームに入れる」


キラキラとして目でセドリックは語った。
箒に乗るのも運動も得意で、親も期待しているんだとか。クィディッチは昔から好きで、ホグワーツに入る前から家でこっそり箒に乗っていたとか。
私は臆病で箒に乗るだけでも必死だからかもしれないけど、目指すだけでも素晴らしいと思うし、セドリックなら実現しそうだなあって思った。


「私は、グリフィンドールだし、チームの応援はできないけど」


前置きをしてから、口を開いた。
先生が入ってきて、ざわついた教室が静かになっていく。
そんな中で、セドリックの方を向いて、こっそりと声を潜めて言った。


「個人としては、セドリックを応援するね」


きっと、すごいシーカーになるね。そう呟くけど反応がなくて、セドリックのほうを見ると口元を覆ってそっぽを向いていた。唯一見えた耳がちょっと赤い。


(授業が始まって数分経ってようやく、頑張るよ、って囁かれた)

2012.7.18 三笠