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グリフィンドールとハッフルパフの試合。
クィディッチの試合は毎回たくさんの人が集まるが、今回は特に観覧者が多く、いつもは忙しくてなかなか来られないダンブルドア先生までもが観に来ていた。


「あれ、今日はスネイプ先生が審判なの?」
「えっ、嘘…! 意味もなくグリフィンドールにペナルティ与えないといいけれど」
「…やりそうね」


スネイプ先生は魔法薬の先生だけど、スリザリンを贔屓していてグリフィンドールが嫌いであることは誰もが知っている。
それは少し度が過ぎているくらいで、校則をでっちあげて目に留まったグリフィンドール生から減点をするくらいはよくある話だ。


「試合開始だわ」


全員が箒で浮かび上がって、試合が開始された。
目を凝らしてグリフィンドールの動きを追う。
開始早々、アリシアの方に向かってきたブラッジャーをジョージがハッフルパフの方へ打った。しかし、その方向にはスネイプ先生がいて(避ける必要はない位置だったけど)、スネイプ先生はペナルティを与えた。


「あんなのでペナルティなんて」
「スネイプ先生ってば、やっぱりグリフィンドールに厳しいわね」


さらにもう一度、理由がないようなことでペナルティを与えられた。
グリフィンドール側から不満の声が上がる。
が、すぐに大歓声が上がった。
ハリー・ポッターが一番高い位置から地上へと急降下を始めたのだ。


「まさか、もう見つけたのかしら!」


全員の視線がポッターへ集中していた。
ポッターが伸ばしていた腕が上げられ、急降下が止まる。その手の先には、金色のスニッチがあった。試合終了だ!
爆発的な大歓声が上がった。こんなに早くスニッチを捕まえるのなんて私が知る限り初めてだ。
うるさいほどの声が後ろから前から聴こえて、選手たちは地上に降りて行く。みんながガッツポーズしたり肩を叩きあったり、喜びを表している。


「素晴らしいわ!!こんなに早く試合が終わるなんて!!グリフィンドールの大勝利よ!!」


視線の先では、グリフィンドールの選手たちが喜びを分かち合っていた。寮生がその勢いのままグランドへ降りて行って、選手たちを担ぎあげて騒ぎ出す。
一瞬だけ、私も行こうかな、と思って。
騒ぎの中心でジョージがこちらを見たのに気づいて、手を振った。


「行く?」
「ううん。此処で見てるほうがいいな」


誰かに担がれて、満面の笑みでガッツポーズをしているのが目に留まる。
一番最初にこちらを見て、そのあとはみんなでばか騒ぎをしている。
ああ、幸せそうだなあ、と。それを見て私も頬が緩んだ。


(観てるだけで幸せになれる)


2012.7.19 三笠