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イースター休暇が近付いてきた頃、去年までとは比べ物にならないような量の宿題がどの科目でも出された。
提出は休暇後であったとしても、ほとんど全員がげんなりするような量が溜まり、ノイローゼになりそうな人も何人か見かけた。

休暇中も図書館にせっせと通い、私は地道に宿題を片付けていた。
夕飯後から談話室で宿題を始めて、一旦休憩をしていると、フレッドくんが話しかけてきた。後ろからジョージも続く。


「なあ
「なに?」
「アー…、時間あったらでいいんだけど、変身術の宿題見せてもらっていいかな。実は1文字も書いてないし調べてすらいないんだ」
「…え?」
「あと呪文学も。まったく、先生方ときたら、こんな時期にあんなに大量の宿題を出すなんて気が狂ってるよな」
「あ、あー、えっと…もしかして、二人とも?」


二人はほとんど同時に、同じような苦笑いを浮かべて頷いた。
変身術も呪文学も、どちらも明後日には提出だ。
毎年テストが近付いているこの時期には宿題が沢山出されて、みんなてんてこまいだと言うのに、まったくこの二人は―――。


「自分でやらないと進級できないよ。教えられるところは教えるから、それでもいい?」
「…間に合うと思うかい?」
「間に合うように教えるよ。だから、明日はちゃんと昼前に起きてね」


にっこり笑うと、戸惑ったように二人は顔を見合せた。
隣でくすくすとアリスは笑っている。


「ウィーズリー、ってば結構厳しいから覚悟しておいた方がいいわよ?」
「え、ちょっとアリス。そんなことないってば」
「同じことをアンジェリーナにも訊いてみなさいよ」
「う。でも私、アリスみたいに途中離脱しないわ」
「あとはできると思ったから離脱したの」


むう、と膨れてみるけど、アリスはくすくすと笑うだけ。
そしてアリスは自分の宿題や本を腕に抱いて、立ち上がった。


「じゃあお先に失礼するわ。3人はもうちょっと頑張ってね」
「おやすみ、アリス」
「おやすみ」



(空いた椅子に二人が座って、私は変身術の本を積み上げた本の中から取り出した)



2012.7.21 三笠