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おじいちゃん、いやチャーリーさんに手紙を書くべきかな、と思いつつ、時間は過ぎて行った。

もう孵っただろうな、というのは、小屋やハグリッドの様子を見ればすぐに分かった。
外で大型ボアハウンド犬がしっぽに包帯を巻いて座り込んでいたし(いつもは小屋の中にいるのに)、ハグリッド自身もドラゴンに噛まれたのか足が少し腫れているようだった。

そしてある日、グリフィンドールの得点が150点も減っているのを見た。
その理由は、あのハリー・ポッターが友達とバカをやったからだ、という噂が流れ、その日から小屋は今まで通りになった。ハグリッドは少ししょげていたけど、犬は大喜びだろう。ドラゴンが家の中にいたとしたら、ゆっくり休んでいられないもの。

だからきっとにポッターとロンとハーマイオニーはドラゴンをどうにかするため何かをして、それがバレて減点になった、と私は納得した。


「おはよう、ポッター」
「えっ、あ、…おはよう」


みんなはあからさまに、ポッターとその友達(聞くところによると、それはハーマイオニーとロングボトムらしい。ロンは手を怪我して医務室にいたとか)を避けていた。
グリフィンドール生だけでなく、スリザリンを負かしてやりたいレイブンクローとハッフルパフも3人を避け、非難していた。
だから、彼らに話しかけるのは相当珍しかったはずだ。
ポッターは驚いて上ずった声を上げた。


「減点されたのって、もしかして、その、例のことで?」
「…ああ、そうだよ」
「だと思った。無事に野生に戻れたらいいんだけど」


ただ逃がしただけじゃない、ということは察しがついた。
きっと、ロンのお兄さんのチャーリーさんに連絡を取ったんだろう。
もしこちらに来ていたのなら会いたかったなあ、と思った。


「まあ、こんなの今だけよ。みんな宿題やテストでピリピリしてるから、そのせいもあると思うわ。テストが終われば、元に戻るわよ」


私はそう言いながら、ポケットからお菓子をいくつか取り出して、ポッターの手に乗せた。以前ホグズミードで買ったヌガーだ。


「元気を出してね。私、あなたたちは間違ってなかったと思うわ」


じゃあね、と言って曲がり角を曲がった。
お礼を言うのが聞こえて、軽く手を振って応える。
もう何も問題が起きないといいな、と思いつつ、でもきっとなにかが起こる気がしていた。



2012.7.22 三笠