あっという間の数日だった。 ポッターが例のあの人と対決したという噂は一瞬でホグワーツ中に広まった。しかも、誰が語ったのかわからないけどその内容はすごく正確で、私もすぐにあの日の出来事を知ることとなった。 クィディッチの最終試合は、ポッター不在のため、シーカーは別の人を使うしかなかった。そのせいもあって、グリフィンドールは過去数百年なかったようなひどい負け方をしてしまった。 アンジーもジョージもフレッドくんも、直後はひどく落ち込んでいた。 けど、それは少し遠くから見ていただけで、私はあの後一度もジョージと話すことはなかった。 お互いに避けていたのかもしれない。 あの日、重なりそうだった唇。キス、しそうだった、のは現実だったはずだ。 どうしてあんなことになったんだろう。 思い出すたびに、顔が熱くなって、無意識に唇を撫でる。 荷造りをしたり本を読んだり友達と話したり、そんな何気ない日常の中で、時折思い出すあの距離感。空気。 「あなた、頭でも打ったの? クィレルに失神させられてから様子がおかしいわよ」 「…その話、結構情けないからやめてもらえる?」 「本当のことじゃない」 「ポッターたちの話と一緒にその話が流れてるのはちょっとやめてほしいなあ」 例のあの人と直接対峙したポッターの勇敢な話と、クィレルに失神させられた私の話。しかもポッターは1年生だ。情けないにもほどがある。 「まあ、ポッターは例のあの人を打ち破った、ただ一人の魔法使いだし。気にしない方がいいわよ」 「うん、そう…そうだよね。でも、ポッターはまだ医務室なのかな?今日で今学期は終わりなのに」 「そろそろ出してもらえるんじゃない? マダム・ポンフリーってば完全に治るまでは出してくれないんだから。あー、でも結局グリフィンドールは4位のままなのよね。今回の事件で少しくらい点数もらえたら良かったのに」 「でも、ポッターたちは絶対いくつも校則を破ってるわけだし、貰っても差し引きゼロになるんじゃないかな」 「う…、ありえるわね」 もうすっかり荷造りを終えて片付いた部屋で、私はアリスと話していた。 時計を見ると、そろそろ夕食の時間になる。 今日は学年度末パーティーだ。各寮の点数も発表される。 どうせスリザリンが1位だけど、と思いながら立ちあがって、広間へ向かった。 2011.7.29 三笠 |