夏休み初旬。 一羽の見慣れない梟が手紙を運んできた。 それは、私宛てというよりも家宛てで、少しの間開封していいものなのか迷った。封筒には祖父と私の名前が並んで書かれていて、差出人は魔法省の動物課からだった。 でも祖父は帰ってこないし、まあいいや、と思ってナイフで綺麗に開封する。 その内容が、正式な仕事の依頼だったから、びっくりしてテーブルの上の紅茶をひっくり返しそうになったくらいだ。 どうして私の名前も書いてあるのだろう。間違っているんじゃないかと何度も読み返してしまった。 「ナーレ、おじいちゃんって今どこにいるの?」 「申し訳ございません、ナーレも存じ上げないのでございます」 「あれ…そうなんだ。フクロウ便で聞けばいいよね」 一番丈夫で早く飛べる梟を選んで、長旅に行ってもらうことを伝えた。 籠から出した後にナーレが水と餌を少しずつ与えて、その間に私は手紙を書き終える。 宛先を書いてから封筒に入れて、梟の足に括りつけた。 「じゃあ、これ。おじいちゃんにお願いね」 ホー、と鳴いて、梟は嘴を私の指にこすりつけた。いつもの愛情表現だ。よしよし、と何度か頭を撫でて、それから窓を開けると、すぐに梟は飛び立った。 数日経って、梟は帰ってきた。 返信は非常に簡素で、「自分は行けないので、やりたいならやればいいが、未成年なのでお金は受け取らないように」とのことだった。 夏休みで予定もあまりないし、引き受けてもいいかなとは思う。 向こうが申し訳程度に指示してきた日程は非常に曖昧だったが、夏休み期間だからどうにか合わせられる。 なるべく丁寧に、失礼のないようにと魔法省へ返事を書き、一番美しい真っ白な梟に持たせた。 そしてその次の日、返事が返ってきた。 内容は、「8/15〜8/22の間、ロンドン北部における調査に同行し、適切なアドバイスをしてほしい」とのことだった。 向こうにはどんな魔法生物がいるんだっけ…といくつか思い浮かべながら仕度をした。 「なお、ホグワーツに所属する友人もしくは後見人においては、2人までを同行することを許可する」 最後に付け足された言葉には一瞬疑問を覚えて、それから、最後に付け足された「魔法生物規制管理部 エイモス・ディゴリー」の名前で納得した。 セドリックは夏休みに手紙を送ると言っていたが、もしかしてこれのことだろうか。もしそうなら、どういう意図なんだろう。 聞いたほうが早いかな、と思って、またさらさらと簡単な手紙を書いてセドリックに送った。 『やあ、。 夏休みはどうだい? 楽しく過ごしていることを祈っているよ。 手紙ありがとう。お察しの通り、君に依頼するように勧めたのは僕だよ。そして僕も仕事に参加することになっている。ちなみに僕は魔法生物のことは君ほど詳しくないし、ただの職員の息子だからね。宿泊施設の掃除とか料理とか、その辺りを手伝うという建前で参加する。情けないけど、僕に出来るのはその程度だ。いつか父のように魔法省で働けたらと思うけど、まだまだ足りないことばかりだ。でもいつか魔法省に入ってみせるよ。 毎日調査するわけではないし、途中少しでも観光できたらいいよな。そのときは是非一緒に行こう。 そしてもし良ければ君の友人も誘ってみてくれ。2人までだけど、料理が上手い人なら嬉しい。残念だけど僕はあまり料理が上手くないからね。――ああ、もしウィーズリーを誘うつもりなら、箒を持ってくるように伝えてくれ。手伝い組は比較的時間が余っているから、クィディッチの練習をしたいんだ。もちろん誘わなくてもいいけど、キングス・クロス駅で別れたときに一緒だったろう? だから、仲がいいのかと思って。 もし時間があれば返事をくれ。いい夏休みになりますように。 セドリック・ディゴリー』 手紙を読み終わってから、今度はジョージに手紙を出した。 セドリックの名前を出すと嫌がりそうだなあとは思ったけど、仕方ない。 楽しい仕事兼旅行になればいいなあ、と荷造りを再開した。 2012.8.13 三笠 |