summer vacation



「お、おはよう…」


結局あまり眠れずに寝坊してしまった。いつもより少し遅い時間にキッチンに行くと、既にお手伝い組の3人が揃っていた。
昨夜のジョージとの会話のせいもあって、少し気まずく思いながら顔を出す。


「おはよ。今日はあと卵をどうにか焼ければオーケーだよ」
「あ、そうなの?」
「その卵が問題なんだけどな」


セドリックとフレッドの言葉を聞いて、手元を覗く。
折角ここまでできたわけだし、なるべく口出しせずに見守ろうかなあと考えた。そして、なるべく見ないようにしてきた方向にそろりと視線を向けた。
お茶の準備をしているジョージは、視線に気づいて、でも笑みを返してくれるわけでもなく、ふいと視線を逸らした。
自分の失態の所為とはいえ、ショックだ。


、スクランブルエッグってさ、牛乳はどのくらい入れればいい?」
「えっ、ちょっと待って」


かといって落ち込んでいる場合ではない。フレッドの隣に行って、卵の量を見て牛乳の量を指示する。ついでに塩コショウの量も教えて、焼くのは任せてサラダとソーセージを運びだした。


「喧嘩でもした?」


運んでいる途中、追いかけてきたようなセドリックが声をかけてきた。
その手には運びきれなかったパンを持っていた。
一瞬だけ躊躇って、それから首を横にふった。喧嘩ではない。でも似たようなものだ。セドリックと話していたら、きっとさらにジョージの機嫌は悪くなるだろうけど。


「……喧嘩じゃないけど、ちょっと謝らないといけないことがある…っていう感じ」
「なんだ、それならすぐ仲直りできそうだな」
「な、仲直りって…、そもそも喧嘩してないってば」


むっとして言い返してしまって、それを優しげな笑みでいなされる。
テーブルに食事を置いて、起きてきたばかりのディゴリーさんに挨拶をした。そして、


「あの、ディゴリーさん。申し訳ないですけど、今日は私、お休みさせてもらってもいいですか? 少しやりたいことができてしまって」
「ああ、構わないよ。調査も大分進んだから、明日の昼には終わるだろう。折角来たんだし、観光するのも面白いと思うよ」
「はい、ありがとうございます」


このまま中途半端に終わりたくないなと思った。調査じゃなくて、3人とのこと。
セドリックに誘われて、ジョージとフレッドを誘って。
来て良かったと思えるようにしたいなって、思った。



2012.8.29 三笠